2017夏.槍ヶ岳・北鎌尾根クラシックルート
(ルート)七倉山荘ー湯俣温泉ー北鎌沢出合ー槍ヶ岳ー新穂高温泉
【1日目】8月11日
七倉山荘5:30-高瀬ダム6:00-湯俣温泉晴嵐荘9:00ー千天出合13:00-北鎌沢出合15:30(泊)
一年前、出発直前で中止となった北鎌尾根に再び挑戦するときがやって来た。北鎌尾根は人気ルートなのでバリエーションとはいえ踏み後は明瞭、お盆の時期であれば、それなりの人が入っているであろうとの話を聞いていた。また、湯俣温泉から先のルートについても、沢の経験があれば余裕であるとの事であったが・・・
当初は我々だけの単独で計画していたので、伊藤新道を下って湯俣温泉を経由して七倉へと戻ってくるラウンドを考えていた。それも面白い案だったが、幸いなことに同時期に金木戸川・小倉谷に入渓するHさんのパーティーに便乗させて頂き、七倉まで送ってもらえる事になった。帰りも新穂高温泉に下山して同乗である。我々は楽をさせてもらった事になるが、小倉谷のパーティーは、大幅な時間ロスで大変であったろうと思う。
10日の夜9時頃に神戸を出発して、小倉谷のパーティーと共に七倉へと向かった。お盆休みの帰省ラッシュは既に始まっていたようで、関西圏を抜けるだけでも、1時間程はロスとなった。11日の3時半頃にようやく七倉へとたどり着いた。勝手なイメージで、ひっそりとした登山口を想像していたのだが、そもそも七倉は裏銀座の入口である。お盆休みの初日となるこの日は大変な人で賑わっており、登山者を乗せた大型バスも入って来ていた。ここへ至る車中では、どうやって仮眠を取るかを考えていたが、到底ツェルトを張る場所などない。とりあえず軒下にマットを敷いて横になったが、さすがに喧騒の中では寝られず、準備をして日の出を待つことにした。
30人超の長蛇の列となっていた。とはいえ、順次タクシーが回ってきたので、すこし待ったら無事に乗り合いタクシーに乗車出来た。
登山口に沢山いた登山者の大半は裏銀座(烏帽子岳方面)に向かって行った。
平坦な道を3時間程歩いたら湯俣温泉・晴嵐荘に到着し、他に来る機会もないだろうという事で、小屋に立ち寄ってみる事にした。
ここでタクシーに同乗していた人に追いついて話をした。
登山者:「今日はどこまで、行かれるのですか?」
(一瞬どう返答するか考えたが、率直に応えた。)
僕:「今日は北鎌沢出合まで行きます」
(果たして意味が通じるのかと思っていたら、案の定の反応。)
登山者:「はぁ~??」
その様子を横で見ていた小屋のご主人は笑っていた。ここへ来る人の大半は竹村新道から裏銀座へ向かうそうだ。まれに伊藤新道を登る人もいるそうだが、水俣川を遡上して北鎌へ向かう人はめったにおらず、今シーズンでは2組目だそうだ。しかも、2週間前に訪れた先の1組は撤退して来たとの事。しかも数日前の台風の影響が残っており、水量は多めであるらしい。北鎌沢までの遡行に関しては、わりと楽観的に考えていたのだが、少し緊張感が走った。
湯俣川と水俣川が合流する地点にかかる壊れかけの橋(っいうか普通で考えたら既に壊れていると表現するのが適切)。
これを越えたら、いよいよ遡行開始である。
しかし、いつものF社の沢シャツでは、尾根に出てからが暑すぎるし、このルートは服装の選択も難しい。
見つけなくても、天上沢を遡上するのみなので、支障はないし、自然消滅するのも時間の問題と思われる。
【2日目】
北鎌沢出合5:30-北鎌コル8:30ー独標基部11:30-独標上13:00-北鎌平18:00(泊)
(↑)北鎌尾根下部
いよいよ独標が近づいて来た
トラバースルートの途中にある有名なコの字型に削られている岩場。
足元は切れ落ちていて、先は奈落の底だ。I君は半泣きになっていた。
ここを通過した後、大半の人はそのままトラバースを続けていたが、
足元が悪く滑ったら死亡(実際、前を行く人が落ちかけて怖かった)
なので、我々は独票を直上した。
しかし、直上のルート選択に失敗してザイルを出す羽目になり大幅に時間をロス・・・
そして、独標の上まで登ると、槍の先端が見えてくる・・・のだけど、ガスがあって微妙。
(↑)P14ぐらい 千丈沢側の明瞭なトラバースルートに引き込まれるが、この先で完全に行き詰まり引き返す。
繰り返すアップダウンに疲れてきて、つい楽そうなトラバースルートを選んでしまったが、ここは完全にミスであった。
2度のルートミスが響いて北鎌平に着いたのは、17時半ぐらいになった。水も残っていたので、北鎌平に泊まる事にした。
【3日目】北鎌平5:00ー槍ヶ岳頂上7:00ー槍ヶ岳山荘8:00ー槍平小屋11:30ー新穂高温泉15:30
僕は正に写真撮影をしているお堂の真裏から頭を出す事になり、邪魔になったので頭を引っ込めた。もちろん拍手などない。
とりあえず、我々も撮影待ちの列に並んで記念写真を撮った。僕はようやく槍ヶ岳に初登頂だ。
I君は、以前、会に入会する前の事だが、一般道で登った際に、北鎌から登って来た人を見て驚いたそうだ。
今回はそのルートを自分で登る事が出来て万感の思いとの事だった。
【後記】
やはり噂どおり、夏季の北鎌尾根そのものは技術的には大して困難な点はないと思う。ルートファインディングが必要な事と、あとは体力勝負だろう。通常の泊まり装備に加えて、沢の道具まで持って歩くのは結構しんどかった。最大限軽量化して17kg(水を含む)ぐらいだったが、思うようにスピードが出なかった。ライト&ファストが主流なのだろうか、大半の人は軽装備で歩いていた。
また湯股から行く場合は、ある程度、沢の経験がないと厳しいと思う。湯俣温泉のご主人によれば、昨年、釣り人が流されて亡くなっているとの事。
このルートに挑む人はめったにいないのだろうが、クラシックルートで行って正解であったと思う。あえて大変なルートで挑んでこその達成感もあろう。
我々のコンビは入会年も近く、沢、岩、雪と様々な山行を共にして、経験を積んできたのだが、へなちょこコンビが、よくあちこちへ行ったものだと思う。I君はしばらく(山は)育休に入る事になり、挑戦的な山行は難しいだろうが、様々な要素がある北鎌尾根クラシックルートは、(元来、素人に毛が生えた程度の)我々コンビの集大成としては大変満足なものとなった。